人々と自然のレジリエンス みやこ旅館 吉田幸弘さん (都路町)

人々と自然のレジリエンス みやこ旅館 吉田幸弘さん (都路町)

 田村市都路町の吉田幸弘さんは、創業90年以上になる『みやこ旅館』の三代目です。

 以前は自ら川で魚を取り、山で山菜やきのこを採り、都路町産のおいしい新鮮な食材を使って料理を振舞っていました。原木からとれるシイタケも香り高いものでした。(九州の冬菇しいたけの原木は都路町の原木でした。)

 「自然がきれいなのが売りの、自然しかない都路だったのに・・・。他のところがインフラ整備されて、人が地元に帰ってくるのをテレビで見たとき、うらやましいと思った。放射能もコロナも見えないものと戦うのはつらいよね」。

 辛かったことをジョーク交えに明るく話していた吉田さんが、遠くを見ながら少し沈黙しました。

 震災直後、吉田さんは避難所で自衛隊とともに炊き出しをしました。震災後一ヶ月で、町に戻りました。旅館で避難者や原発関係の調査員、報道者の受け入れも考えていましたが、「まさか2年も人が住めない状態になるとは思いもしなかった」と吉田さん。生計を立てなければと必死だったそうです。

 吉田さんは、震災前から過疎化少子化で進む子供の減少も危惧されていました。「子供がいたら、やっぱり安全なところに住みたいと思うよね」。子供たちに苦難も乗り越えられる強い精神が築けるよう寺の住職とコラボレーションし、都路の自然に触れながらの座禅合宿も企画しました。(これはコロナ禍で延期されているので、時期を見て開催される予定です)
 
 原発事故は過疎化に拍車をかけ、農林水産業にも大打撃を与えています。それでも、震災前から始めていた清流にすむカジカの復活を目指した活動も継続し、カジカの放流や梅花藻を育てている吉田さん。

 困難も多種多様、人々の考えも多種多様、そんな中で吉田さんは妻の久子さんと家業の旅館を運営し、巣立った子供たち、今まで出会った人たち、今周りにいる人たち子供たち、都路町を育んでくれていた自然を思い、持ち前の明るさと強さで人のため自然のためになることをこれからもやり続けたいそうです。

みやこ旅館 吉田幸弘さん
住所:〒963-4701 福島県田村市都路町古道寺ノ前18−2
電話:0247-75-2018