いわき市最北端の川前町は、小野町・田村市・川内村に隣接する阿武隈高地の農村地帯です。東から西に徐々に標高が上がり、同町の桶売地区は平均海抜が500メートルにもなり、冬はたびたび積雪もあります。渓流沿いに磐越東線が走りますが、利用できる地区は限定的、道路(県道)も道幅の狭いところが多い地域です。いわき市全域の人口は約34万人ですが、川前町の人口はわずか900人(高齢化率が50%)です。
このような地域環境をふまえ、平成26年に「川前地区高齢者等支援ネットワーク連絡会」ができ、高齢者見守りや不足する社会資源の開発検討を始めました(会員数は90名、住民の約1割が参加)。しかし、医療や福祉サービス不足の解消には至らないのが現実でした。それでも、川前で、人が集まり支え合い、よりよく暮らしたいと、平成29年に「小さな拠点づくり」の検討が始まります。
「小さな拠点づくり」は、国が推進する事業で、地域住民が主体となって、単一では続けて行くことが難しい活動や事業を組み合わせていくことで、地域を維持して行くための新しい仕組みを作ることを意味します。川前では、その取組と同時に、文字通りの人が集まる場所として「小さな拠点」を設けることを検討したのです。
川前町桶売(おけうり)地区の空き家だった古民家をリノベーションして、暮らし・交流・振興のベースとなる「小さな拠点」づくりのプロジェクトは、クラウドファンディングを活用するなどして、進められました。また、運営組織として新たに『NPO法人小さな拠点おおか』(令和5年2月認証)を設立しました。参加したのは、地域の区長や民生委員や住民、福祉支援活動者等14名です。
今年5月、ようやく「小さな拠点おおか」が完成しました。「川前での暮らしを謳歌することのできる拠点づくりを目指す。これから取り組まなければならないことはたくさんあるし、実行するための課題もあるが、まずは一歩踏み出した」と代表の永山正一さん。5月から火曜日を開放日としてプレオープン中です。9月からカフェを併設して本格稼働が予定されています。地域の女性たちが庭に野菜やハーブを植えたり、男性たちが庭木の手入れやベンチを設置したりと住民みんなで準備中です。
「オープンの時間帯には、施設入口に手書き看板を出しています。お近くにお越しの際には、気軽に声を掛けてください」とスタッフの藤舘友紀さん。地区外の来訪も大歓迎だそうです。
住民が地域の魅力を活かしながら川前に長く住み続けていくため、ひとつひとつできることから着実に進めていこうと日々活動する「NPO法人小さな拠点おおか」を応援したいですね。
活動拠点:小さな拠点おおか
〒979-3202 福島県いわき市川前町下桶売字矢田谷地146
E-Mail: kawamae.ooka@gmail.com
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