こんにゃく芋栽培が盛んで「こんにゃくの里」と言われた矢祭町。八溝山系の里山に広がる耕作地で栽培が行われ、こんにゃくの製粉所も町内で稼動をしています。しかし、こんにゃく芋の全国的な価格低迷で、こんにゃく芋の生産者が激減。矢祭町茗荷地区でも休耕地が増えてきました。そこで注目されたのが、ゆず。昔から農家の庭先に植えられていたゆずは、北風のあたらない斜面地での栽培に適しています。茗荷地区では、日当たりのよい南面の斜面で栽培が続けられています。
20年ほど前、茗荷地区栽培農家22件で「矢祭南ゆず生産組合」が設立されました。収穫したゆずは、果汁用やジャム原料として県外へも出荷、矢祭町内では“ゆずシャーベット”などの加工品をユーパル矢祭と協働で製造販売しています。ゆずシャーベットは、ふるさと納税の返礼品としても使われる特産品となっています。
一見好調にみえるゆず栽培ですが、後継者は減少の一途。ゆず栽培は他の果実ほどは手間がかからないものの、実の周りに長く鋭いトゲがあるため、収穫が大変。トゲで実に傷がついたり、落下させると割れが入り商品価値がなくなります。一個一個、高枝切ハサミで収穫しなければならず、大変な手間と時間がかかります。
「生産者が高齢になって、22件だった会員は、今9件。このままだと、あと2~3年したら5~6件になるだろう。町内で製造販売できるゆずシャーベット以外の加工品を作って販売額を伸ばしていかないと、続けていける農家がいなくなってしまう」と組合の代表を務める緑川裕之さんは話します。「矢祭の柚子は実も大きく味にも自信がある。搾り機もあるし、加工場もある。矢祭町の特産品はこれ!という商品を作りたい」と組合長は強い想いを持っています。
矢祭町のイメージキャラクター「やまっぴー」はゆずの木の妖精です。収穫シーズンだけでなく、年間を通してゆずを味わえる商品づくり、ゆずでのおもてなしなど、少しずつ進められようとしています。
トップ画像:矢祭南ゆず生産組合(東白川郡矢祭町茗荷地区)組合長 緑川裕之さん
画像:ゆずシャーベット