まもなく飯舘村に新しい民宿が誕生します。
その名は『古今呂の宿 福とみ』。
経営するのは、飯館ブランドかぼちゃ「いいたて雪っ娘」の育ての親、渡邊とみ子さんです。
「ようやく、お父さんとの約束が果たせる」と渡邊とみ子さん。お父さんとは、渡邊さんの夫・福男さんのことです。福男さんは腕のよい大工でしたが、いずれは納豆加工やさまざまな体験を提供したいと古民家を求めて、自らの手で準備も進めていました。東日本大震災が起こるよりもすっと前のことです。
その頃、とみ子さんは飯館村の新ブランドにすべく、いいたて雪っ娘の栽培で大忙しでしたが、「お父さんの夢を叶えたい思いは、いつしかそれは自分の夢にもなったの」と振り返ります。
誰もが予想もしなかった大地震、原発事故後の全村避難の大きな試練の中、とみ子さんはいいたて雪っ娘を絶やさないために全国的に協力者を募ったり、避難先で畑を借りて栽培を継続。同時に6次化商品開発なども着手。その活躍ぶりは各メディアで大きく取り上げられました。妻の奮闘を陰で支え続けたのが福男さん。どんな時もとみ子さんが笑顔でいられた大きな力です。
帰還後の見直しで、準備を進めた古民家も、かつての住まいも取り壊しが決まりました。そこで新たな夢が生まれます。「お父さんが、いつか民宿をやりたいと、それをふまえた母屋のリフォームを始めたの」ととみ子さん。病と闘いながら、自身が思い描く理想の形に工事を進める福男さんだったそうです。
2018年のクリスマスイブ、とみ子さんの献身的な看病も届かず、福男さんは夢の途中で旅立ちました。「いつか必ず実現させるとお父さんと約束した」と、自身の生業と同じくらいの思いで、一歩一歩夢に向かって歩みを止めなかたとみ子さん。2024年のスタートとほぼ同時に大規模な改修工事に着手、木の香と温もりに包まれた民宿が完成しました。
「一人でもできる範囲だから、小さいの。でも、少しでものんびりくつろいでもらいたい」ととみ子さん。「温泉はないけど、ジェットバスにしたから、気持ちいいよ〜」と朗らかに笑います。
正式オープンはすべての検査を終えてからのため、まだ未定ですが、すでに全国に広がるいいたて雪っ娘ファンからの問合せが多数寄せられています。
トップ画像:渡邊さんご夫婦の写真
画像:古今呂の宿 福とみ外観
画像:洗面コーナーから客室へ向かう廊下
画像:笑顔でリフォーム中の福男さん
画像:洗面コーナー
画像:4名宿泊可能の客室