▼林業と農業の暮らし
代々林業を営む家で育った鈴木俊輔さんと、他県から嫁いできて現在は農業を営む妻の鈴木理也子さんご夫妻が暮らす塙町のご自宅を訪ねました。あぶくまの南端に位置する山あいでの暮らしは、自然との共生が感じられ、とても居心地のよい空間が広がっていました。
▼家業を継ぐ
俊輔さんは、地元の森林組合で20年近く仕事をして来ました。いずれは家業を継ぐと漠然と考えていましたが、40歳を迎えて心を定めました。父祖が育ててきた70haに及ぶ広大な森林を、自分で管理して保全していこうと「自伐型林業」を選びました。
▼自伐型林業とは
現在の日本の林業は、山林の所有者から委託を受けた森林組合等の事業者が大規模に展開する形態が主流となっています。そのため、生産性が重視され、乱伐や機械の大型化によって環境破壊が懸念されているところもあります。これに対して自伐型林業は、山林所有者が長期的な視点で適正な間伐を行うことで収入を確保すると同時に森林の環境も保全することができるため、地域に根差した持続可能型林業と言われています。
▼自然栽培(不耕起栽培)による農業
妻の理也子さんは、保育園で保育助手として務めたのをきっかけに、食の安全性に興味を持ち、無農薬・無化学肥料・不耕起の農業を始めました。主力はぶどうで、ゆず、まこも、藍、大豆等も生産し、道の駅等で販売しています。町内外の色んな人から様々なことを教えてもらって始めましたが、それによってネットワークが広がり、さらなる学びにつながったと言います。
▼持続可能な生活を作り出すもの
今回の取材を通して、持続可能な生活を生で見せていただいたように思いました。50年、100年という単位で木の成長を見据え、さらに立派な木に成長させるために間伐を行い、そこから収入を得る夫。人工的な農薬や肥料は使用せず、出来るだけ自然に近い形で安心・安全な作物を育てて生活の糧を得る妻。鈴木ご夫妻は、それぞれに自立した仕事をされておられますが、いずれも気負ったところがなく、とても自然に溶け合っているようでした。持続可能な生活は自然体での生活から醸し出されてくるものなのだと実感しました。
(2024年7月30日取材I)
■名称:「スージーファームアンドフォレスト」
■店舗はない
■URL:https://www.instagram.com/riyako4810/
写真トップ:いざ山に
普通の乗用車では無理だということで、鈴木さんの4輪駆動の軽トラで連れて行ってもらった山の中。道はかろうじて通れる幅。急峻な傾斜地。無理を言って木の前に立っていただき写真を撮らせてもらった。
写真2:一人で何でもこなす
植林から50年を経た杉林には、30mにも成長した木々が山の斜面にそびえる。その中から伐採する木を選び、チェーンソーで伐採し、運べるサイズに裁断し、トラックに載せて下に運ぶ。これを一人でやっている。素人の私にはとても想像できない作業に思えた。
写真3:たわわに実るぶどう
理也子さんが育てるぶどう畑。ここはまだ3年目で幹は細いが、枝ぶりもよく、まだ緑の実はよく膨んでいてこれから徐々に色づいていく。10月13日(日)開催予定の「青空市」が待たれる。塙町真名畑字佐賀草の佐ヶ草バス停前空き地で9時~15時。