跳ねるエビを村の起爆剤に。熱いハートの社長が目指すエビ養殖場のアミューズメント化「HANERU葛尾」(葛尾村)

▼運命の巡り会わせ…葛尾村に熱い男現る

阿武隈地域のほぼ中央部に位置する葛尾村。震災後の原発事故で全村避難となり、村民は村を離れることを余儀なくされました。それから10年後の2021年3月、当時は大手上下水道コンサルタント会社の技師長だった松延紀至さんは全村避難を解かれ、復興途中だった葛尾村を仕事の一環で訪れました。

▼安定した身分を捨て、エビの陸上養殖と福島復興に挑む

会社命令とはいえ、まったく縁もゆかりもなく、さらに知り合いもいないい葛尾村でエビの陸上養殖を始めた松延さん。しかも会社は途中で養殖事業から手を引くこととなった。しかし、葛尾村でのエビの陸上養殖に可能性を感じ、この事業で福島復興の一翼を担いたいと思った松延さんは大手下水道コンサルタント会社を退職し、新会社の社長として村に残る決心をした。

▼村外から移住した10名は村の中心軍団に

やると決めた後は持ち前の行動力で突っ走った。その熱いパッションに呼応するように全国各地、海外からも一緒にやりたいと人材が葛尾村に集まった。同社企画部で働く菅野さんもその一人。「現在在籍の10名のメンバーは皆、松延社長の人柄と熱いパッションに魅かれて村外から集まったんです」と語ってくれた。取材時、葛尾村には160名の移住者がいるが、そのうちの10名がHANERU葛尾のメンバー。さらに5名が村の消防団員に入団するなど葛尾村の中心的存在になりつつある。

▼葛尾村から被災各地へ養殖場を波及させたい

将来の夢は葛尾村にエビのアミューズメントパークを建設したいとのこと。たくさんの子どもたちにエビの養殖場を見学してもらい、釣り堀で採ったエビをその場でバーベキューをしながら食べ、さらには世界中のエビを展示し、エビについて学べる場所にしたいのだそうだ。この葛尾村で陸上養殖したエビを村の名物にして、養殖場を拡大し村の雇用に寄与し、いずれは福島県内外の被災地に養殖場を増やす計画。現在、郡山市の女子大の協力を得ながらエビ料理のレシピを開発中です。2025年4月からの一般販売に向けて奮闘中のHANERU葛尾、来春大きく“跳ねる”予感しかない。

(2024年11月7日取材Y)

■名称:「HANERU葛尾」

■住所:〒979-1602 福島県双葉郡葛尾村大字落合字関下21-4

■駐車場:有り

■URL:https://haneru-katsurao.com

写真トップ:巨大なビニールハウスが5棟あり、その中には一年中一定の水温に管理されたビニールプール。長年、水のプロとして培われた経験が活かされている。すくすく育つバナメイエビを子どもを見つめるような温かい眼差しで見つめる松延社長。

写真2:阿武隈地域の標高450メートルで陸上養殖されたバナメイエビ。徹底的に維持・管理された設備で育てられている。水の管理のプロ、松延社長の経験が活かされ、養殖特有のにおいなどがなく、透明度の高い綺麗なプールで成長している。

写真3:女子大の食品学の先生のご協力を得てレシピの開発も進んでいる。来春からの一般販売に向けてメンバーも増やす計画。活きの良いバナメイエビを地域の子どもたちに試食してもらい「美味しい」と言われるとこれまでの苦労した道のりも無駄ではなかったと実感する。