「いつか福島の地で暮らしたい」と考えていた平山祐さんと綾子さん。平成30年10月、神奈川県からいわき市遠野町へ移住し、地域おこし協力隊員としての暮らしを始めました。
いわき市は祐さんのお母さんの故郷で、幼いころから何度も訪れていたことから、将来はいわきでと考えていました。実行に移そうとした矢先に東日本大震災が起こり、移住を考えるところではなくなってしまい、神奈川での仕事を続ける日々を送っていたそうです。
それでも、いわきで暮らしたい想いは消えることがなく、「いわきがだめでも福島県内のどこかで自分たちの想い描く田舎暮らしができれば」と、ふるさと回帰支援センターに足を運びました。その時、いわき市遠野町で『遠野和紙』の伝統を継承する地域おこし協力隊員募集の情報を得ました。
土地感がある、祖母の家にも近い、何より夫婦ともに採用可能であること、絵を描いていた綾子さんが和紙について関心をもっていたことなどが決め手となり、夫婦二人で遠野町に移住しました。住まいは、入遠野川を眺める集落にある一戸建て。時々虫もやってくるけど、広々として快適な暮らしです。
平山さん夫妻は、これまで紙漉きの経験はありません。原料の楮(こうぞ)の皮剥くことも、紙をすくことも初めての作業です。楮は、昔から栽培をしていた経験のある農家が協力して栽培しています。今後は自分たちで栽培できるよう、手入れの仕方、収穫、原料への加工作業を習得駐です。
紙漉きは、遠野和紙伝統継承の第一任者であった瀬谷安雄さんが平成26年に他界し、指導者となる人がいないことから、埼玉県の和紙工房で指導を受けました。「まだまだ思うような和紙を漉くことはできませんが、遠野町の小中学校の子供たちと一緒に卒業証書用の和紙を漉くことができました」。
初めての体験や出会いの連続の毎日ですが、「生活を楽しむことができる日々は充実しています。任期の3年間、紙漉きの技術を磨くとともに、和紙を使った作品を作りも進めて、遠野町で暮らしていくための基盤を築いていきたい」と」と綾子さん。二人の挑戦は、今その一歩を踏み出しました。