「食べた瞬間に幸せを感じてもらえる彩豊かな野菜を届けたい。耕作放棄地の畑を夫と二人で耕すことから始めたのが3年前でした」と話し始めた塩田明美さん。郡山市西部の農家から石川町の古民家が並ぶ山あい米農家に嫁ぎましたが、農業は義父と母が担い、農繁期に手伝う程度でした。
しかし、3年前、義父が介護の必要な生活になったことを機に、夫と二人で農業の道へ。米作りを進めるうちに、前述の思いが湧き上ってきたそうです。耕作放棄地だった畑を夫と二人で耕すことから始め、近所やJAの方など多くの人に助けてもらいながら、米と野菜作りに励む毎日。野菜も近隣のマルシェをはじめとして、宅配で送ることができる量まで生産できるまでになりました。
ところが、「購入者に喜ばれる嬉しさを感じるのと同時に、自分に無理を強いていると感じるようにもなった」と明美さん。現在は畑作物を少なくし、その分、以前から関心のあった種(一世代のみで使われている種ではなく、自家採取を継続していく)に注目し、山間の畑に適した美味しさとエネルギーに満ちた野菜を作りたいと、実験を重ねています。長年放棄地となっていた畑は、山砂で栄養分が少ないため、畑の地力を上げるための作業も必要で「いい土になるには4~5年はかかるかな。ゆっくりと取り組みます」と前向きです。
新しい加工品の開発にも取組みました。できあがったのは「お木の実・ソルト」。木の実(ナッツ)とハーブをブレンドした塩です。どんな料理にもあいますが、新鮮な野菜を使ったサラダで食べるのが、明美さん一押しだそうです。今後はシリーズとして揃えたいと準備中です。
「都会に住む人たちにおいしいよと勧められたサラダは、実も味も薄かった。もっと彩豊かで、食べた瞬間に幸せを感じるものを食べてほしいんです」と明美さん。そんな野菜を作ることを目標に、ゆっくりと、しっかりと実験を進めています。
【塩田明美さん】
郡山出身、石川町在住。ふくしま農業女子ネットワークのメンバーとマルシェなどに参加。
「お木の実・ソルト」は県中を中心に、カフェ・レストラン、販売店等7か所で利用販売されている。
郡山の『自然食品とみや』、いわき市泉の『ブルーシュエット』で販売されている。