矢祭町の北部に位置する金沢地区。ここに、地区住民全18世帯が賛同し、協力して作り上げた里山『来る里の杜』があります。
金沢地区住民間では、「戦後の植林で植えられた杉が成長し、枝は道路の上を覆うほど伸びた。家に日も当たらなくなってきたし、下草も伸びたまま手入れもできなくなってきた。自分だけでは切ることもできない」という課題を抱えていました。
平成27年の新年会で「それならいっそ地区全体で整備をしよう」と意見が出され、地区内の森林所有者が協力を快諾。住民による「金沢地域里山づくり実行委員会」が結成され、里山づくりのプロジェクトが始動しました。
平成28年は町の支援を受けて、伐採と植林を実施しました。7haに及ぶ再生里山には、伐採時に残したシンボルツリーや山桜の他、譲り受けた三春滝桜の子孫となる苗木も植林しました。その他多種の花木も植栽し、四季折々に花々が咲き誇り、100年先まで生き続ける杜になることを期待しています。
平成29年からは金沢地区住民が3班に分かれ、各所の草刈りや肥料散布を継続するだけでなく、里山ハイキングのための歩道などを整備してきました。
里山の名称『来る里の杜』は、平成29年に愛称募集によって決定しました。「県内外の多く方から応募をいただいたことは、皆さんが関心を寄せていただいている証。地域の宝のこの山を、たくさんの人たちに愛される里山にしていきたい」と事務局を担当する片野惠仁さんは話します。「整備が始まって8年目。出来る人ができることをやりながら、植栽の管理や登山ルートの整備、増設を進めています。今では地区内の休耕地にハスを植えたり、蝶の集まる木々を植栽するなど、年々活動が広がってきています」とも。
現在、2つのハイキングコース(北の杜コースと南の杜コース)が整備されています。ずれも約1時間で回れ、誰でも自由に低山登山が楽しめるので、ファミリーや小グループで訪れる人達も増えてきました。毎月第1土曜日には、“来る里の杜へ登ろう”と低山登山の愛好者等30人程が集まって、楽しい登山のひとときを過ごしています。
「成果が見えて嬉しい反面、長期継続管理の費用確保が今後の課題」と片野さんは言います。矢祭町の新名所となり得るこの杜を守る活動を応援したいですね。
トップ画像:『来る里の杜』
画像:里山づくり