「101人のシェア型本屋」から地域活性化の活路を見出す (船引町)

▼賑わっていた昔は良かった

田村市のJR磐越東線の船引駅前で「Arumatie101人のシェア型本屋」を営む吉田正之さんは、学生時代賑やかだった船引駅周辺の商店街が廃れていく現状に憂いを抱いていた。吉田さんの学生時代、通学路として通った駅前商店街は活気に溢れ、買い物客で混雑していた。しかし、現在は、人通りも少なく、閉店している店舗も多く、寂しい気持ちに駆られていた。

▼自分が故郷のために出来ることとは

ゼネコンの技術者として定年後も働いていた吉田さんは親の介護のため毎週末、新幹線と磐越東線を使って船引町に帰省していた。船引駅に降り立つとそこはシャッター通りと化した故郷の光景が飛び込んできた。吉田さんは、いつしか「自分が先頭に立って地域活性化を」という思いが強くなっていった。

▼はじめの一歩をクラウドファンディングでスタート

2023年に会社を退職し、故郷に戻った吉田さんは以前から興味のあった小さな棚を貸して棚主さんに本を販売してもらう「シェア型本屋」の経営に取り組んだ。まず開設資金50万円をクラウドファンディングで55万円を集め、さらには資金提供者に棚主さんになってもらうアイディアに福島県内だけでなく関東圏からも54人の棚主さんが集まった。

▼逆転の発想で街並みに彩りを与える

「シェア型本屋」開業の傍ら、生まれ故郷の活性化にも足を踏みだした。船引駅前商店街のシャッターを活用して、ひとめ見れば明るい気持ちになれる「シャッターアート」の制作は駅前通りを華やかにしている。こちらもクラウドファンディングを実施し、今後はさらに増やしていきたいと意気込んでいる。

▼今では棚主さんたちも地域活性化のキーマン

 取材時、ボランティアで店番をしていた棚主屋号の「書窓書房」さんにもお話を聞けたが、ご自身も地域活性化のために何かしたい、でも、何から始めればいいのかわからない、と自問自答していたそうだ。今は「シェア型本屋」の棚主どうしのコミュニティが生まれ、読書会を開催したり、次世代の子どもたちのために何かしようという機運が高まっている。ひとつひとつの棚は小さいが、101個集まれば大きな地域活性化への知恵と未来が拓けるようでした。

(2025年1月27日取材Y)

■名称:「Arumatie101人のシェア型本屋」

■住所:〒963-4312 福島県田村市船引町船引字五升車69-13

■電話:0120-438-522

■定休日:火・水

■駐車場:有り(船引駅前駐車場4時間無料)

■URL:https://arumatie.co.jp/

写真トップ:クラウドファンディングで資金を集めた。もともと本に興味がある資金提供者のかたがただったので、棚主さんとして参加するのも自然な流れでしたと話す吉田さん。本を通じて人が集う地域活性化につながるプランを現在も模索中でした。

写真2:船引駅を出て、田村市役所方向に歩き出すとすぐ左手側にある店舗。
綺麗な店内には101個の棚がズラリと並ぶ。複数の棚に同じ本が陳列されていても、棚主さんの思い入れによって価格が違っていたりすることも楽しい発見です。

写真3:シャッター通りとなった商店街に少しでも人目に付きやすいようにほどこされたシャッターアート。色鮮やかな作品は、今後、駅前商店街の名物になれるようにさらなるシャッターアート店舗を増やしていきたいと語ってくれた。